「英語を話すと、自分の声が違って聞こえる気がする」
こんな風に感じたこと、ありませんか?実はこれ、多くの日本人が経験していることなんです。英語を話すとき、実際に声が変わっているのでしょうか?それとも気のせいなのでしょうか?
この記事では、「英語を話すと声が変わる」理由を、以下の観点から掘り下げていきます。
1. 本当に「声」が変わっているのか?
まず結論から言うと、英語を話すときは、実際に発声の仕方が変わっていることが多いです。そのため、「声が変わる」と感じるのは単なる錯覚ではなく、ある意味本当のことなのです。
2. 発声の仕方の違い【詳しく解説】
日本語と英語、発声のベースが違う
言語 | 主な発声場所 | 声の響きの特徴 | 口の動き | リズム |
---|---|---|---|---|
日本語 | 喉の前方・声帯付近 | 平たく、鼻や喉元に響く | あまり大きく動かさない | モーラタイミング(拍のリズム) |
英語 | 喉の奥・胸部(共鳴腔) | 深く、口腔や胸に響く | 大きく開けたりすぼめたりする | ストレスタイミング(強弱のリズム) |
日本語:ナチュラルで平坦な発声
日本語の発声は、比較的リラックスした状態で、喉の前の方(声帯付近)で声を出すのが特徴です。
このため、日本語では「小さな口の動き」「平坦な抑揚」でも十分伝わります。
例:日本語の短いフレーズ
「こんにちは」
→ 声の響きは喉元中心。唇も舌も大きくは動きません。
英語:共鳴とパワーが必要な発声
英語では、深い声・豊かな響き(resonance)が求められます。特にネイティブスピーカーの発音をよく聞くと、声が胸の奥や口の中全体に響いています。これは英語が共鳴腔(resonating cavity*を大きく使っているからです。
また、口の形や舌の位置を大きく変えることで、豊富な音を出し分けています。
例:英語のフレーズ
「How are you doing?」
→ “how” の /h/ は喉の奥から空気を吐き出し、”doing” の /d/ や /ŋ/ は舌の動きと鼻腔の共鳴を使っています。全体的に口の開き方も大きく、声が胸に響くのが特徴。

発声の違いを体感できる簡単なトレーニング
■ 共鳴の違いを感じる方法
- 日本語モード:
- 「あいうえお」と普通に発音
- 胸に手を当ててみても、あまり振動を感じない
- 英語モード:
- “ah”, “ee”, “oo”, “ay”, “oh” と大きな口を開けて発音
- 胸に手を当てると、振動(共鳴)が感じられる
■ 声の高さ(ピッチ)も変わる?
実は英語を話すとき、多くの日本人が声が低くなる傾向があります。
これは、英語の発声では喉を開いて共鳴させるため、自然と声帯がリラックスし、声が深くなるためです。
プロのナレーターや声優も活用するテクニック
声の演技で英語っぽさを出すときは、次のような要素を意識しています:
- 胸声(チェストボイス)で話す
- 母音を強調して響かせる
- 語尾を下げず、流れるように言う
これにより、「声質そのもの」が英語モードに切り替わります。

3. 母音の違い【詳しく解説】
🔹 母音の数の違いからくる「音の豊かさ」
まずは日本語と英語の母音の数を比べてみましょう。
言語 | 母音の数 | 主な特徴 |
---|---|---|
日本語 | 5音(あ・い・う・え・お) | 口の形・舌の動きが少なくてもOK、明瞭でクリアな音 |
英語(アメリカ英語) | 約15〜20種類 | 舌の高さ・前後・口の開き・長さなどで区別される |
※イギリス英語やオーストラリア英語ではまた違った数や特徴があります。
母音の種類の違いを分類してみる
英語の母音は主に以下の3つに分類されます:
① 短母音(short vowels)
- /ɪ/(bit), /ɛ/(bed), /æ/(cat), /ʌ/(cup), /ɒ/(hot), /ʊ/(book)
- 発音時間が短く、はっきり区別するのが難しい
- 舌の位置が微妙に違う
② 長母音(long vowels)
- /iː/(seat), /uː/(food), /ɑː/(father), /ɔː/(law), /ɜː/(bird)
- 発音時間が長く、響きが豊か
- 日本語にない音質も多い
③ 二重母音(diphthongs)
- /aɪ/(my), /eɪ/(say), /ɔɪ/(boy), /aʊ/(now), /əʊ/(go), /ɪə/(here)
- 音が途中で滑らかに変化する
- 日本語ではあまり使われない構造
図解:英語母音の口の開き・舌の位置マップ

このチャートは、横軸と縦軸で以下のように意味が分かれています:
軸 | 意味 | 説明 |
---|---|---|
横軸(左右) | 舌の位置(前・中央・後) | 左側は舌を前に出す音(例:i)、右側は舌を後ろに引く音(例:u) |
縦軸(上下) | 口の開き具合(狭い〜広い) | 上に行くほど口が狭く、下に行くほど大きく開ける母音 |
このように、英語では舌の高さ・前後の位置・唇の丸め方で音を細かく区別します。
日本語との音の違いがもたらす影響
◎ 日本語話者がよく混同しやすい音
英語の音 | 日本語で近い音 | よくある間違い |
---|---|---|
/ɪ/(bit) | 「イ」 | /iː/(beet)と区別できない |
/ʌ/(cup) | 「ア」 | /ɑː/(car)と混同されやすい |
/æ/(cat) | なし(強いて言えば「エ」と「ア」の中間) | 「ア」で代用しがち |
/əʊ/(go) | 「オウ」 | 二重母音で発音せず、「ゴー」と言ってしまう |
母音の違いが「声の印象」を変える理由
英語の母音は、音の種類が多い・共鳴が深い・口の動きが大きいため、話すときの「声のトーン」や「音の響き」が大きく変わります。
例:
- 日本語の「オ」 → 口を小さく丸めて「オ」
- 英語の /ɔː/(law) → 口を縦に開き、舌を奥に引いて「ロー」に近い音
このような動きの違いにより、英語を話すと声が太く、低く、豊かに響くように感じられるのです。
実践ポイント:英語の母音を「感覚」で覚える方法
✅ 鏡を見ながら口の形を確認
✅ ネイティブの口の動きをまねる(YouTubeで “mouth position English vowels”)
✅ 音声学アプリで舌の位置を視覚化する(おすすめ:ELSA Speak, Sounds: The Pronunciation App)
4. 子音の発音方法の違い
英語では「強い息(ブレス)」を伴う子音が多く、以下のような特徴があります。
- 破裂音(例:/p/, /t/, /k/)
- 摩擦音(例:/f/, /v/, /θ/, /ð/)
- 舌の位置が高く、口の中で空気をコントロールする技術が必要
一方で日本語は比較的子音が弱く、息の勢いも控えめです。そのため英語らしく発音しようとすると、発声に力が入り、声が変わったように聞こえるのです。
5. 心理的な要因も?
また、英語を話すときは「自分じゃない自分」になっているような感覚もありますよね。たとえば:
- 外国人になりきって話す
- 慣れない言語で緊張する
- 無意識にトーンや抑揚を変えている
こうした心理的な要因も、自分の声が変わって聞こえる理由の一つです。
まとめ:声は本当に「変わっている」
英語を話すとき、声の出し方・響かせ方・発音方法すべてが変化するため、声が変わるのは本当です。これは英語が特別な言語というより、日本語との違いが大きいためです。
この「声が変わる感覚」を楽しんで、自分の中にもう一人の自分がいるような気分で、英語を話してみるのも楽しいかもしれませんね。
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